「健康麻雀って言うけど、何が健康なの?」
そう思われた方も多いのではないでしょうか。
麻雀といえば、頭を使うゲーム。それはわかる。でも「健康」と名前がついているのは、なぜなんだろう。
この記事では、その理由を2つの側面からご説明します。ひとつは環境の話、もうひとつは脳の使い方の話です。
研究のこともご紹介しますが、最初にはっきりお伝えしておきます。私たちは「認知症を予防できます」とは申しません。 そう言い切れるだけの証拠は、まだ揃っていないからです。
東林間ぞうさん健康麻雀教室です。今日は、わかっていることと、わかっていないことを、正直にお話しします。
「健康」と呼ばれる、ひとつめの理由
まずは、いちばんシンプルな話から。
健康麻雀には、3つの約束があります。

- ❌ 賭けない
- ❌ 飲まない(お酒)
- ❌ 吸わない(煙草)
この3つを守るのが健康麻雀です。
つまり「健康麻雀」という名前は、麻雀から体に負担のかかるものを取り除いた形を指しています。特別なルールがあるわけではなく、ゲームそのものは普通の麻雀と同じです。
お金のやり取りがないので、負けても失うものがありません。お酒が入らないので、頭がはっきりした状態で最後まで楽しめます。煙草の煙もないので、呼吸器に不安のある方でも安心です。
日中の明るい時間に、学ぶために集まる。それが健康麻雀の場です。
「健康」と呼ばれる、ふたつめの理由
もうひとつが、脳の使い方です。
ここからが本題になります。
麻雀は、脳科学でいうところの「複数の認知機能を同時に使うゲーム」です。チェスや将棋と同じように、脳をかなり広い範囲で使います。
具体的に見ていきましょう。
① 記憶力を使っています
麻雀を打っているとき、頭の中ではこんなことをしています。

- 誰がどの牌を捨てたか、覚えておく
- どの牌がもう場に出てしまったか、覚えておく
- 自分が何を狙っているか、覚えておく
- 誰がリーチしたか、覚えておく
これらは**短期記憶(ワーキングメモリ)**という働きです。
この力、実は日常生活でずっと使っているものなんですよ。
買い物で「あと卵と牛乳」と覚えておく。会話で相手の話の流れを追う。料理で複数の鍋を同時に見る。
全部これです。
② 判断力を使っています
麻雀では、順番が回ってくるたびに選択があります。

- この牌を切るか、残すか
- どの役を狙うか
- 安全そうな牌を残しておくか
答えがひとつに決まらない問題を、その場で決める。これを何十回と繰り返します。
こうした判断をつかさどるのが、脳の司令塔と呼ばれる前頭前野という部分です。
そしてこの前頭前野は、加齢によって機能が落ちやすい場所でもあると言われています。
③ 注意力を使っています
麻雀は4人で行うゲームです。ですから、自分の手だけを見ていればいいわけではありません。
- 誰がリーチしたか
- 誰がどんな牌を捨てているか
- 誰が鳴いたか
周りにも注意を配り続けることになります。自分の手と場全体、両方に気を配る。これも脳を使う作業です。
④ 指先を使っています

牌を持つ。並べる。並べ替える。積む。
地味なようですが、これも脳への刺激になります。
高齢の方において、細かな手先の運動が認知機能と関連していることは知られています。当教室で手積みの卓を基本にしているのも、ここに理由のひとつがあります。
⑤ 人と関わっています
そして——ここが、いちばん大きいところかもしれません。
健康麻雀には、会話があります。
笑います。褒めます。「惜しかったね」と言い合います。同じ卓の方と、自然とやりとりが生まれます。
孤独は認知症のリスクを高める要因のひとつと考えられており、社会的な交流は脳の健康維持に役立つ可能性があるとされています。
一人で黙々と続ける脳トレとは、ここが決定的に違うところです。
研究では、何がわかっているのか
ここからは、実際の研究のお話です。
数字が出てきますが、大事なのは「どこまでわかっていて、どこからはわかっていないか」の線引きです。そこを正確にお伝えします。
2006年の研究
香港で行われた研究が、この分野ではよく知られています。
軽度から中等度の認知症のある高齢者62名を対象に、16週間にわたって麻雀をしていただいた、というものです。参加者は週2回または週4回のグループに分けられ、記憶や認知機能の検査を、開始前・終了後・1か月後に測定しました。 PubMed
その結果、打つ回数にかかわらず、すべての検査項目で改善が見られました。特に数字を記憶する課題で大きな改善があり、言語の記憶やMMSE(認知機能の検査)でも中程度の改善が報告されています。しかも、その効果は麻雀をやめて1か月経った時点でも続いていました。 PubMed
(Cheng ST, Chan ACM, Yu ECS. International Journal of Geriatric Psychiatry, 2006)
2024年のレビュー
さらに最近、これまでの研究をまとめて検証したものが発表されました。
世界13のデータベースから53本の研究を集め、そのうち47本が観察研究、6本が介入研究でした。 Jpreventionalzheimer
結論としては、麻雀を長く打っている人ほど、認知機能・心理面・生活機能が良い傾向にあること。また介入研究では、全般的な認知機能や短期記憶が高まり、気分の落ち込みが和らぐことが報告されました。 Jpreventionalzheimer
ただし、この研究は同時にこうも述べています。
研究の多くが相関を見たものであり、麻雀が脳にどう働きかけているのかという仕組みは、まだ解明されていない。今後さらに質の高い研究が必要である。 Jpreventionalzheimer
(Tse ZCK ら. Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease, 2024)
つまり、どういうことか
整理するとこうなります。
| わかっていること | まだわかっていないこと |
|---|---|
| 麻雀をしている人は認知機能が良い傾向にある | 麻雀が認知症を「予防できる」かどうか |
| 短期記憶や気分に改善が報告されている | 脳のどこにどう働いているかの仕組み |
| 効果がしばらく持続した例がある | 長期的にどこまで効果が続くのか |
「良い傾向がある」と「予防できる」は、まったく違う話です。
ここを混同した宣伝を見かけることがありますが、私たちはそういう言い方はしません。
なぜ日本でも広がっているのか
健康麻雀は今、全国の自治体や高齢者施設、カルチャースクールでも取り入れられています。
理由は、麻雀が「考える」だけのゲームではないからだと思います。
考える。話す。笑う。手を動かす。人と関わる。
これを同時にやっている。
脳科学では、こういう活動をマルチドメイン活動と呼びます。複数の領域を同時に使う活動、という意味です。
近年の認知症研究では、ひとつの脳トレを繰り返すよりも、複数の刺激を組み合わせた活動のほうが良いと考えられるようになってきました。
麻雀は、そのすべてを一度に含んでいます。
- ✔ 記憶
- ✔ 判断
- ✔ 集中
- ✔ 会話
- ✔ 指先
- ✔ 感情
しかも、これらを「訓練」ではなく「遊び」としてやっている。ここが大きいと思うんです。
ドリルを毎日やり続けるのは、なかなか大変です。でも麻雀なら、楽しいから来る。気がついたら3時間経っている。続けるということに関して、これほど強いものはありません。
私たちが考える、健康麻雀
ここからは、教室としての考えをお話しさせてください。
繰り返しになりますが、私たちは「認知症を予防できます」とは申しません。
そう言い切れるだけの証拠は、まだ揃っていないからです。研究者の方々自身が「さらなる研究が必要だ」と書いていることを、私たちが飛び越えて断言するわけにはいきません。
でも、こうは思っています。
笑って。
考えて。
話して。
指先を動かして。
「また来週ね」と約束する。
そんな時間を毎週過ごすことは、心と体、そして脳の健康づくりにつながる大切な習慣になる。
数字で証明できることばかりではありません。けれど、通ってくださる方の表情が明るくなっていくのは、確かなことです。
だからこそ、私たちは掲げています。
「勝ち負けより笑顔。」
東林間ぞうさん健康麻雀教室について
当教室は、東林間駅から徒歩1分の場所にある、初心者専門の健康麻雀カルチャースクールです。1階の路面店ですので、見つけやすいかと思います。
麻雀牌に触ったことがない方を前提に、基礎からお伝えしています。基本のレッスンは手積みの卓で行い、牌を混ぜて積むところから。指先を使っていただく時間も、大切にしたいと考えているからです。
賭けない、飲まない、吸わない。勝ち負けを競う場ではありませんので、点数がわからなくても、覚えが遅くても、まったく問題ありません。
覚える速さには個人差があります。急がず、人と比べず、ご自分のペースで。
ぞうさんは、ゆっくりでも大丈夫。
これが教室の合言葉です。
お一人での参加が中心ですので、お知り合いと一緒でなくても心配はいりません。相模原市内はもちろん、町田市や相模大野、中央林間方面からもお越しいただけます。
健康麻雀そのものについては健康麻雀とはどういうものかをまとめた記事、60代・70代の趣味としての麻雀についてはこちらの記事でも詳しくお話ししています📖
まとめ
最後に、この記事の要点を3つに。
1. 「健康」の意味は、2つあります
賭けない・飲まない・吸わないという環境と、脳を広く使うという中身。この両方です。
2. 麻雀は、脳を同時に何か所も使います
記憶、判断、注意、指先、そして会話。これを訓練ではなく遊びとして続けられるのが強みです。
3. ただし「予防できる」とは言えません
良い傾向は報告されていますが、断定できるだけの証拠はまだ揃っていません。私たちも、そう申し上げるつもりはありません。
麻雀は、勝つためだけのものではありません。習い、少しずつできることが増え、仲間と笑える時間も麻雀の魅力だと思っています。
難しいことは抜きにして、まずは笑いに来てください。お待ちしております🐘